はじめに|「離職率90%」はなぜ起きる?
美容師業界には「離職率90%」という衝撃的な数字があるのをご存じでしょうか?
厚生労働省の調査によると、美容師の新卒3年以内の離職率は50%を超え、10年以内には9割近くが辞めていると言われています。
「やりがいのある仕事なのに、なぜ続かないのか?」
現役美容師として10年以上現場で働き、経営者としてもスタッフの採用・育成に関わってきた筆者が、リアルな実態を包み隠さず解説します。
離職率が高い最大の理由は「給与と労働環境のギャップ」

想像以上に低い初任給
美容師のアシスタント初任給は平均で17〜20万円前後。
東京や大阪など都市部でも、20万円を超えるケースは多くありません。
さらに社会保険が未加入のサロンもまだ多く、実質手取りは15万円前後になることも。
長時間労働が常態化
営業時間以外に、
- 朝練(自主練習)
- 夜練(モデル練習)
- 休みの日の撮影会や講習
などがあり、「休日でもサロンにいる」ことが当たり前になりがちです。
その結果、月6〜7日休み、拘束時間12時間以上…という過酷な働き方に。
収入アップまでの道のりが長い
スタイリストデビューまで平均3年。
その間は昇給も緩やかで、20代前半では生活が厳しい人も多いのが現状です。
美容師の離職につながる5つのリアルな理由
自分に向いていないと感じた瞬間がくる
- 手先が不器用
- コミュニケーションに苦手意識がある
- 美容に対する情熱を持てない
これらに少しでも当てはまると、「この仕事向いてないかも…」と感じやすくなります。
✅関連記事:
『美容師に向いてない人の特徴7選|向いてないと思ったときの対処法』
厳しい上下関係・古い慣習
美容業界は体育会系の文化が根強く残るサロンもあり、
- 上下関係が厳しい
- 先輩の言うことは絶対
- 休憩をとるのも気を遣う
といった環境も、離職の大きな原因になります。
教育制度が整っていない
教育カリキュラムがなく、先輩任せの「見て覚えろ」スタイルのサロンも。
明確なゴールが見えないまま毎日を過ごし、モチベーションを失って辞めてしまう人も少なくありません。
将来が見えない
アシスタント→スタイリスト→店長…とキャリアパスはあるものの、収入や待遇が大きく変わるわけではないケースも。
「このまま続けても将来が不安」と感じて転職する人が増えています。
✅関連記事:
『美容師の将来が不安な理由と対処法|現役が教える生き残る道』
心身の限界がくる(燃え尽き症候群)
体力的にも精神的にも消耗しやすい仕事。
睡眠不足や過労が重なり、突然限界を迎えてしまう人も。
実体験|辞めようと思ったときのリアルな葛藤

筆者も新人時代、何度も「もう無理だ」と感じた瞬間がありました。
朝8時に出勤し、終電で帰る生活。
モデルハントに失敗して泣いた日も、先輩の機嫌に振り回された日もありました。
それでも踏みとどまれたのは、
- お客様の「ありがとう」の言葉
- 施術で笑顔にできた瞬間
- 自分の成長が実感できたとき
この3つが積み重なったからです。
美容師を辞める前に考えてほしい3つの選択肢
転職(環境を変える)
ブラックな環境に身を置く必要はありません。
最近では、
- 月8休み+社保完備
- 教育カリキュラムあり
- フレックス制度あり
のような働きやすいサロンも増えてきました。
サロンを変えるだけで劇的に改善されるケースも多いです。
✅関連記事:
フリーランス・業務委託として独立
売上に応じて高収入を得られるフリーランスの働き方も人気。
自分のペースで働きたい人にはぴったりです。
✅関連記事:
『美容師がフリーランスになるメリット・デメリット【完全ガイド】』
アイリスト・ヘッドスパニストなどへの転身
「美容師免許を活かした別職種」に転身する人も増加中。
アイリストやスパニストは、
- 時間の融通が利きやすい
- 手荒れしにくい
- デビューまでが早い
というメリットもあります。
離職率を下げるには?経営者・現場スタッフができること

スタッフ側ができること
- 自分の働く目的・目標を定める
- 辛い時期を「成長の時間」ととらえる
- 信頼できる先輩・仲間を見つける
経営者・店長ができること
- 明確なキャリアパスの提示
- フィードバックを重視した教育体制
- 労働時間・休日・報酬の見直し
筆者の経営するサロンでは、離職を防ぐために
- 月8休以上
- 売上に応じたインセンティブ
- 研修制度の充実
を導入し、スタッフ定着率の向上に成功しました。
まとめ|美容師は「辞めたくなる仕事」だけど、続けた先にしか見えない景色がある
離職率が高いのは事実です。
でもそれは、美容師という仕事が過酷な分、成長も求められる仕事だからこそ。
そして続けた先には、自分だけの「武器」と「世界」が待っています。
もし今、辞めようか迷っているなら、この記事が少しでもあなたのヒントになれば嬉しいです。
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