美容室・アイサロンを経営していて「そろそろ人を雇いたい」と思ったとき、実はいくつかの落とし穴があるのをご存じですか?
「売上が伸びてきたから人を増やそう」「手が回らないからスタッフに任せたい」といった理由で勢いで雇ってしまうと、あとから大きなトラブルや後悔につながることも…。
この記事では、実際に複数店舗を経営している筆者の経験も交えながら、「人を雇う前に知っておくべき5つのこと」を徹底解説します。
「これからスタッフを雇いたい」「雇用に不安がある」「どこまで準備すればいいか分からない」という美容師・経営者の方に向けた保存版ガイドです。
雇用=コストという認識を持つこと

「人手が増えれば楽になる」は大間違い
オーナーがよく抱きがちな誤解が「人を雇えば自分の負担が減り、楽になる」という考え方です。確かに目の前の作業は分散されますが、雇用には 固定費・教育・人間関係トラブルといった新しい負担も発生します。
実際にかかるコストの例
- 基本給:25万円
- 社会保険料(事業主負担分):約5〜6万円
- 交通費・福利厚生:1〜2万円
→ 合計で月30万円以上が安定して出ていきます。
これに加え、教育にかける時間、トラブル対応による精神的な負担も「コスト」として覚悟が必要です。
売上目標から逆算して人件費率を計算する
人件費率とは?
人件費 ÷ 売上 × 100 で算出できます。
美容業界では 40〜50%以内が健全ライン。これを超えると利益がほとんど残らなくなり、経営が苦しくなります。
具体例
月25万円の給与を払う場合、社会保険も含めると実質30万円。
→ 人件費率50%以内に収めるには、1人あたり月60万円以上の売上が必要です。
もしスタッフが売上を60万円出せないなら、オーナー自身がカバーする必要があり、「雇ったのに利益が減った」という逆転現象が起こりかねません。
社会保険・雇用保険・労災などの手続き負担を把握する
知らなかったでは済まされない法的義務
正社員やパートを雇うと、以下の保険への加入が義務です。
保険種類 | 内容 | 事業主負担 |
---|---|---|
健康保険・厚生年金 | 社会保険 | 半額(従業員と折半) |
雇用保険 | 失業手当など | 0.6〜0.9% |
労災保険 | 業務中のケガ | 全額事業主負担 |
これに加えて、労働契約書・勤怠管理・賃金台帳の作成も必須です。
実務のポイント
- 書類作成や届け出は意外と手間がかかる
- 遅れると追徴や罰則のリスクあり
- 顧問社労士やクラウド労務ソフト(SmartHR、ジョブカン等)を導入すると安心
教育体制と人材育成の「仕組み」が必要

戦力化までには時間がかかる
人を雇えばすぐに売上が上がるわけではありません。
新人が即戦力になるには 最低3〜6ヶ月はかかると考えるべきです。
育成フロー例
- 【1ヶ月目】接客マナー・店舗ルール・簡単な補助業務
- 【2〜3ヶ月目】メニューごとの技術研修、モデル練習
- 【4ヶ月目以降】技術チェック表に基づく評価、デビュー基準判定
さらに、定期的な面談やフィードバックがなければ、成長スピードが遅れ、離職リスクも高まります。
採用戦略とミスマッチ防止の工夫が必要
条件より「価値観・相性・目的」の一致が大切
採用で最も多い失敗は「スキルが高いのに馴染まない」「独立志向が強くすぐ辞める」といったミスマッチです。
防止のための工夫
- 求人情報に「どんな人と働きたいか」「サロンの理念」を明記する
- 面接で履歴書だけでなく「なぜここで働きたいのか」を掘り下げる
- トライアル勤務や1日体験を取り入れ、現場でのフィーリングを確認する
採用は「条件の合致」よりも「ビジョンの共有」が長期定着のカギです。
【まとめ】「雇用=売上UP」ではなく「準備=安定経営」
人材雇用は経営における大きな転換点です。
しかし準備不足で雇ってしまうと、売上は増えず固定費だけが増える「人件費倒れ」に陥る危険性があります。
今回の5つのポイントを再確認しましょう。
- 雇用=コストという認識を持つ
- 売上から逆算して人件費率をチェック
- 社会保険・労務の義務を理解する
- 教育・育成フローを設計しておく
- 採用戦略と相性チェックを入念に
これらを押さえて準備することで、スタッフ定着率UP・安定した売上・経営者自身の時間の余裕が確保できます。
人を雇う前こそ、この記事を振り返って体制を整えることが、長期的に愛されるサロン経営への第一歩です。
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